こんにちは!大阪で、産前・産後・子育て中の女性専門の心理カウンセラー・臨床心理士・公認心理師の藤澤真莉です。
産後うつ病について調べている中で、「ほ~!」と思った論文に出会ったので、今日はその一部をご紹介します。
産後うつ病の女性の体験について
C.T.Beck、という方が、産後うつ病の女性の体験について、対話による質的研究をしています。
そして、当事者の主観的な体験には、4つの段階があると、見出しています。
それを、上別府圭子先生が『産後うつ病/うつ病を患った女性と子育て』(女性心身医学vol18,No3,pp391-397)の論文の中で、訳してくださっています。以下、その部分の引用です。
産後うつ病の母親の体験
1)恐怖と遭遇する(encountering terror)
はじめに、いままで経験したことのないような不安が突然起こり、それに恐れを覚え、続いて絶え間ない強迫観念に襲われ、そして神経衰弱に陥り、物事に集中できない、霧の中に包まれてでもいるような体験をする。
とめどもなく強迫的に、自分がひどい人間であり、子どもをかわいく思えないひどい母親であることを、一日中考えた。2)本来の自分を見失う(dying of self)
次に、本来の自分がどこかに消え去り、ただただ感情を動かさずにロボットのように育児をする自分がいると感じる。生まれた子どもは自分を母親として受け入れないのではないかと恐れる。他人から悪い母親だと思われることも恐ろしく感じ、子どもから距離をとる者もある。母親として失格だと感じたり、子どもを傷つけたいと思ったりすることから、自分を傷つけたくなる気持ちが起こり、実際に自殺行為に及ぶ者もある。3)生き延びるために奮闘する(struggling to survive)
本来の自分を失っている段階から、なんとか回復しようと努力する。医療従事者に助けを求める者もある。はじめて電話をした産科医から「もっと深刻な人もいて、あなたはたいしたことはない」などと、期待はずれな対応を経験している人も少なくない。適切な支援を得るまでに、長い道のりをたどる。4)自分を取り戻す(regaining control)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jspog/18/3/18_KJ00009351222/_article/-char/ja/
気分の落ち込む毎日の中に、少しずつ気分の晴れる日が混じるようになる。そして、産後うつ状態から回復する途上で産後うつ状態のために失われた、取り戻すことのできない子どもとの時間を悲しむ者もある。
なるほど~。
産後うつ病で、なんらかのSOSを出している人は、切迫感が強い。
私のところに、カウンセリングを求めてこられる方も、「産後うつ病と言われた、今本当に苦しい、できるだけ早く予約を入れたい」という方が少なくありません。
藁をもすがる気持ち、生き延びるために奮闘している、という感じが、申し込みのためのお電話やメールの文面から伝わってくるので、できるだけそこに応えるよう努力しています。
(幸い、というかなんというか、今はそんなに当カウンセリングルームはスケジュールがパンパンじゃないので、お問い合わせから1週間以内に、だいたいご予約いただけます。
忙しくなりたいけど、そうしたら緊急のご予約に対応できなくなる、というジレンマがあります。。。どうしたものか。)
そして、この4段階説は、
混乱して、自分を見失ったように感じている、産後うつ/産後うつ病のクライアントさんに、
適切な治療を受ければ、希望のある未来があることを伝える材料として、
また、今はどんな段階でいるのかを理解してもらう材料として、使えると思いました。
「産後うつ病は、適切な治療を受ければ治る」、と伝えるにも、
できるだけクライアントさん本人が、納得感や了解感をもつ言葉で説明したいので、
産後うつ病の当事者の方たちの使う表現や、このような質的研究による分析は、どんどん取り入れて、使っていきたいと思います!
やっぱり、心理士としては、当事者の方の主観的な体験に、できるだけ丁寧に寄り添いつつ、回復へと向かう筋道を、しっかり提示できるようにしたい。
最後までお読みいただき、ありがとうございました~!
産後うつ病、産後クライシス、流産・死産後の心のケア、育ちの見直し・・・など産前・産後・子育て中のご相談を承っています。
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