切迫流産で安静中、命について考えたJさんの出産体験

中絶カウンセリング
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『女神たちのタペストリー~あなたの出産体験おしえてください』

こんにちは!大阪で、産前・産後・子育て中の女性専門の心理カウンセラー・臨床心理士・公認心理師の藤澤真莉です。

今回の女神Jさんと私は、映画『かみさまとのやくそく』の上映会で、出会いました。

たまたま隣に居合わせて、映画の感想をおしゃべりする中で、
Jさんの出産体験に興味がわき、お願いして今回のインタビューをさせてもらいました。

Jさんは、まさかの妊娠発覚から、切迫流産により、最初の2か月は寝たきりで過ごしていました。

アクティブなJさんにとって、安静に過ごすのは大変なことでした。

しかし、いつ流産になるかわからない不安と向き合う中で、Jさんの“命”についての捉え方が大きく変化しました。

さわやかに、ご自身の変化について語ってくれたJさんのタペストリー、ぜひご覧ください。

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【Jさん(30代女性)】

え、妊娠?でも流産?

Jさんは、教育関係のお仕事をしている。

学位をとるために大学院へ通っていた時、
生理が「なんだか変だ」と思い、婦人科を受診した。
忙しい職場にいたら、生理だろうと思って、スルーしていたかもしれないくらいの変調だった。

妊娠の検査薬も試さずに受診したことろ、妊娠4週であることが判明した。

しかし、お医者さんから、「受精卵の形がへしゃげているし、出血もしているし、ほぼ流産だろう」と告げられた。

Jさんは、妊娠すら想定しておらず、知識もなかったので、
「色々言われて、妊娠しているけど、流産ってこと?え?なんかよくわからんけど、とにかく、残念やったなぁくらいにしか、思っていなかったんですよ」。

お医者さんからは、自然流産は約2割の人がするし、別にあなたが悪いわけではないから、気にせずに普通に過ごすように言われた。
そのため、Jさんは、普段通りに、ダンスを習いに行ったり、ヨガをしたり、身体を動かしていた。

1週間後に、ちゃんと流産しているかどうか確かめるために再び受診した。その日は、夜に高校の同窓会に行く予定にしていた。

ところが、Jさんのお腹の赤ちゃんの、心拍が確認された。
「先生から、ここまでどうやって来たんや!?って言われて。普通に歩いてきましたって答えたら、なんで歩いてきたんや、タクシーで帰れ!」と言われた。
同窓会に行きたいなど、とても言えず、なくなく当日にキャンセルをした。
受診したクリニックでは入院ができないので、帰宅後はトイレと食事以外は、ひたすら寝とくようにと指示され、自宅安静となった。

入院中、命について感じる、考える

突然にはじまった、Jさんの寝たきり生活。
夫が休みの日はよかったのだが、平日になると、生活がたちゆかなくなった。
そこで、Jさんの実家に移動し、過ごすことにした。
出血がとまらず、どんどんひどくなっていく。
ネットで調べれば調べるほど、これは流産しているのではないかと思った。
トイレで、「あ~、今赤ちゃんが出てしまったんじゃないか!」、「絶対あかんわ~!」と思っていた。

出血が止まらないので、実家に来て1週間後、近くの産婦人科を受診した。

すると、あまりおしゃべりではない先生が、内診をして最初の一言目に、「おっしゃ~!生きている!」と言った。
この一言は、今でも脳裏にこびりついている。

Jさんは、「もういないかなって思っていたし、ダメだと思っていたから、わ~!生きていた!ってなって涙があふれました」。
そして、出血がひどいので、そのまま入院となった。

「その期間が、私の中では、一番衝撃でした。」
Jさんはつわりがなく、お腹もまだ膨らんでいない。自覚としては、「ほんとうに健康体そのもの」なのに、24時間の寝たきり生活となった。

「せっかくここに授かった子どもを、なんとかしたいと思うけど、自分には寝ておくことしかできなくて、積極的に助けてあげることはできない。」と感じた。

入院中、内診して赤ちゃんの命を確認できるのは、一日に1回。
「さっきは生きていたけど、もう生きていないかもしれない」とすぐに考えてしまった。
そして、Jさんは「命って、当たり前やけど、自分ではコントロールできないもんやなぁって、考えさせられました」。

「もしかしたらこの子は、2、3週間しか生きられないかもしれない、そのあともどうなるかわからない。この子の命みたいなものを、どんなに短かったとしても、そんな生き方だったとしても認めてあげなあかんなと思うようになったんですよ」。

Jさんは、命について、「ぶっちゃけ、もう少しドライな感覚を持っている」と思っていた。
妊娠がわかった最初は、「流産すると言われても、ふーん、しょうがないか、くらいの感じで」思っていた。
入院中の安静を経て、「そんな風に命を感じるとは思っていませんでした」。「あかんかったら、しゃーないやん、くらいの感じで居られるかなと思っていたけど、それはずごいビックリしました」。

Jさんは教育関係のお仕事なので、普段は子どもたちに、変化を起こすことを期待して、関わっている。
大人は子どもをコントロールできると感じてしまいがち。
でもこの経験で、「子ども一人ひとりの生き方を尊重して見守ることこそが、教育の基本だということを改めて実感しました。」という。 

この妊娠期間を経て、どんな子であっても、「生まれてくるってすごいことなんだなと、単純な感想だけど、そう思いました。」

子どもを尊重するなら、自分も尊重する

結局、4日間で退院となった。出血が落ち着いたので、帰宅してからも、次の検診までは安静に過ごしていた。

おそるおそる、次の検診に言ったら、「もう明日から働いていいよ」と言われた。

Jさんは、「え~、働くとか、その前に歩いてもいいんですかって感じで。」
急に安静が解除になり戸惑ったが、その後、無事に大学院での論文作成に取り掛かることができた。

その後の妊娠の経過は順調だった。
生まれてくるまで、「ずーっと、いつなんどき、流産するかもしれない、生きるか死ぬか、みたいなのがあって。」妊娠後期に入っても、検診のたびに「あ~よかった、生きていた、生きていた」と思った。

そんな心配なく、100%無事に生まれてくることだけを信じて、赤ちゃんのために、編み物をしたり日記を書いたりしている妊婦さんを見て、
「嫌みとかじゃなく、それはそれで、すごく幸せなことだ思いました」。
しかし、Jさんにとっては、「いい学びだったのかなって。子育てをする上で、一番大事な亊を息子君が教えてくれたのかなって思います」。

そして、「逆に、私の人生は私の人生。子どものためにとか、何とかって、一所懸命になって我慢したところで、子どもの人生は変わらないし。本当にその子を尊重するんだったら、自分を尊重せなあかん、という風にも思いました」。
そして、「本来の自分を取り戻して」、妊娠後期は、国内旅行に行くなど、積極的にしたい亊をして、楽しんで過ごした。

あれよあれよと、無事に出産

出産自体は、「本当に順調でした」。Jさんは、痛みに強く、陣痛がきても、「陣痛は、もっと痛いはず。こんなくらいなわけがないな」と、買い物や外食をして過ごし、「結構ギリギリまで我慢しちゃいました」。

家で破水して、入院。
病院に到着してから、「あれよあれよという間に」、無事に男の子が生まれた。「思っていたより、痛くなかったし、思っていたより、大変じゃありませんでした。「子どもの名前を呼んで、がんばれ~!と叫んでいました。生きて無事に生まれてきてくれたことが何よりうれしかったです」。

【編集後記】

Jさんにとって、妊娠初期は「強烈な」体験でした。

はじめての妊娠で、濃く命について感じ、考えを巡らせたことを、教えていただきました。

『かみさまとのやくそく』の映画を一緒に見て、その生命観や宇宙観を、Jさんと共有したことは、私がJさんの体験を想像するのに、とても役に立ちました。

妊娠や出産の経験は、人生の中で命について考える、絶好の機会だと思います。それは、わが子だけでなく、自分自身や、自分と関わる全ての人についての認識をも、変化をもたらします。

Jさん、体験談から、命への畏怖をたくさん感じました。Jさんがより自由に、自分らしく生きていかれることを、心より願っています!

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