『女神たちのタペストリー』~出産体験おしえてください~
「一緒にいて、居心地のいい人」。
今回の女神Cさんは、この言葉がぴったりくる方です。
インタビューは、木の香りがする、ナチュラルテイストの素敵なお家で、行いました。
Cさんは、二人の男の子のママです。
第一子の出産の時には、思い描いた通りのお産にならず、安産だったものの、「しんどかった」印象が残っています。
その経験をふまえ、Cさんは、第二子の時には、丁寧にバースプランを練り直しました。
そして、陣痛は「子供が頑張っているエネルギー」と捉えることで、痛みにフォーカスせずに乗りきることができ、満足のいくお産ができました。
好奇心が旺盛で、何事も楽しむことがモットーのCさん。
お子様の食べ物アレルギーなど、子育ての中で、大変なこともあります。
しかしCさんにとって、それは「与えられた課題、メッセージ」であり、課題に対して調べ、取り組むという試行錯誤を楽しんでいました。
Cさんの出産体験から、「出産や子育てにワクワクする、トキメク」心のコツを、教えてもらいました!
【ケース4 Cさん 30代後半】
長男:自然なお産を目指すも、想定外の陣痛の痛み!
結婚して1年ほどたち、子どもを望むようになった。
基礎体温をつけ始めてまもなく、妊娠した。
Cさんは、「情報をいろいろ調べるのが好き」なので、妊娠中に、妊娠や子育てに関する様々な情報を収集した。近隣の市のマタニティ教室、妊婦向け講座、子育てについての講座などを受けに行き、インターネットでも調べていた。
その中で、予防接種について学んだ。
Cさんの周囲にいるお母さんは、全員、任意接種もふくめて、子どもに受けさせていた。しかし、Cさんが読んだ本の中では、打つ必要はないという意見があり、「言っていることが正反対」だった。
Cさんは、予防接種について、「不自然なものを、からだに入れること」に違和感があると思った。
しかし、予防接種を受けないことで、医療ネグレクト(親が子どもに必要な医療を受けさせないこと)と思われたり、ママ友との関係がうまくいかなくなったりすることが心配だった。
妊娠中から、夫婦で予防接種について話し合い、定期接種のみ受けることに決めた。
また、ピプノセラピーについても学び、リラックスして出産にのぞめるように準備した。
マタニティヨガにも通い、呼吸法の練習をし、ヒプノセラピーのCDを聞き、イメージトレーニングをした。
妊娠中に、「自分の価値観を見つめなおしたり、何がしたいかな」と考え、「できるだけ自然な形で生みたい」と思った。里帰り出産することにし、仕事が産休に入ってからは、実家で過ごしていた。
予定日から二日すぎた早朝、Cさんは体が熱くて眠れなくなり、読書をしていた。
そうしていると破水し、父親に車で病院に連れて行ってもらった。
そのまま入院となり、病院で点滴をしながら、陣痛が来るのを待った。
Cさんの実母は仕事で付き添ってもらうことができなかったが、「第二の母」である伯母が病院に来てくれて、陣痛を待つ間の話し相手になってくれた。
病院からは、24時間以内に、陣痛がこなかったら、陣痛促進剤を打つといわれた。
陣痛促進剤は、使いたくないと思っていたので、「できたら陣痛来てほしいなと思っていました」。
その日の夕方に陣痛が来て、午後8時ごろに強くなった。
実母が病院に到着し、伯母と交代する。
そして、より強くなってきた9時半ごろには、仕事を終えた夫が、かけつけた。
「タイミングがすごいいい感じでした」。
Cさんは、産む瞬間が痛いと思っていたので、陣痛の痛みは、想定していなかった
便秘だったこともあり、「すごいお尻が痛くて」。
思うように痛みを逃がすことができずに、りきんでしまう。
練習していた呼吸法も、うまくできなかった。変なところに力が入っていたためか、子どもの心拍が弱くなってきた。
Cさんが水を飲もうとする直前に、緊急帝王切開になるかもしれないから、水を飲まないようにと言われた。
「水も飲めないし、お腹もお尻も痛いし、帝王切開になるかもしれないし、子どもの心拍さがっているしで、周りには親も主人もいてくれたんですけど、結構しんどかったですね。」
結局、帝王切開はせずに、日付がかわるころに、産むことができた。子どもが一人立ちするスタートの瞬間に、夫婦で関わりたかったので、臍の緒は夫と一緒に切った。
小麦アレルギーの第一子が、つなげてくれるご縁
第一子は、ひどい乳児湿疹になった。
特に顔に出ていたので、会う人会う人に、「大丈夫?」「病院に行っている?」など言われので、「どうしたらいいんだろう」と悩み、Cさんの得意な情報収集をした。
王道の医学的な治療から、民間療法まで、色々な方法について調べた。
治療にあたって、ステロイドを使用するかどうか、迷った。病院にいけばステロイドを使うことを勧められる。一方で、ステロイドは量が増えて行ったり、症状を押さえているだけなので、根本治療をしたほうがいい、という情報もあった。
「ステロイドは、ずっと使っていたらよくないのかなぁ、不自然なのかなぁ」と迷いながら、少し使ってはやめることを繰り返していた。
アトピー、乳児湿疹のひどい赤ちゃんの場合、お母さんが、赤ちゃんを人目にさらすのをためらい、家にこもりがちになる場合がある。
しかし、Cさんは家にこもっていられない性格なので、子どもと一緒に外出し、気晴らしをしていた。
「乳児湿疹のことで、めちゃめちゃ深刻に滅入るまではなかった。なんか、それが一つの勉強のきっかけかなって。」
長男は、小麦のアレルギーが強く、ほかに卵、牛乳もアレルゲンだった。10か月ごろ、離乳食でうどんをあげたら、子どもの顔が腫れあがってしまった。
そこから、代替食品はあるのか、アレルギーをよくするにはどうしたらよいのかを探索した。
また、いわゆる「自然派」のママ、身体にいい食事や、自然な暮らしを望む、同じ価値観をもったママとつながりたいと思い、フェイスブックで情報を得たり、自然志向の人たちとつながったりするようになった。
似た価値観のママ、同じ悩みを持つママ同士だと、一緒に遊ぶときのおやつを、パンやお菓子などの手軽なおやつではなく、おにぎりにしてくれるなど、食への理解があるので付き合いやすかった。
「もしかしたら、そういうのを学ばせてもらうために、一人目はそういうのを持ってきてくれたのかなって。そういうつながりを作ってくれるために」。
第二子の出産:「陣痛は子どもが頑張っているエネルギー」
育休期間に、お出かけや、同じ価値観を持った人とのつながりを作ることを楽しみ、子どもが1歳半の時に、仕事に復帰した。兄弟を作ってあげたいと思い、第二子を望むようになった。
断乳し、生理が再開して間もなく、妊娠がわかった。
しかし、この時は、化学流産だった。化学流産とは、妊娠のごく初期に、妊娠検査薬で陽性反応が出るものの、胎嚢は確認されずに生理がきて、継続した妊娠にならないことを言う。
Cさんは、検査薬で陽性がでたあと、その二日後、三日後には陽性の反応が消えてしまった。
「まだ形は見えていなかったけど、やっぱりちょっとはショックで。命がなくなっちゃったって。」
そして、化学流産から約4か月後に、再び妊娠できるか不安な中、第二子を妊娠した。
第二子の出産に関しては、やはり自然なお産をしたかったので、助産院で産むことも検討した。調べた結果、助産院で出産するには、家族の協力と助けが必要だった。Cさん家族の当時の状況では難しかったため、第一子の時と同じように、里帰り出産をすることにした。
バースプランを、長男の時から、さらに練り直した。
そして、先生に自分で書いたバースプランをみてもらった。「これはできる、これはできない」と、叶えられることと、そうでないことを相談した。結局、できないと言われたことも、できるだけ意向に沿ってもらうことができた。
たとえば、臍の緒を着るタイミングについて。
一般的に、病院で出産した場合、臍の緒は、赤ちゃんが出てきたら、すぐに切る。
これは、赤ちゃんに血液が行き過ぎて、新生児黄疸が強く出るのを防ぐためだ。
しかし、一部の助産院では、出産後、胎盤が出てきて、臍の緒の拍動が止まるまで、臍の緒を切らないところもある。その方が、赤ちゃんが貧血になりにくいなどのメリットがある、という考えだ。
Cさんは、臍の緒の拍動が止まるまで、切るのを待ちたかったが、それは無理だと言われた。そして、拍動が止まるまで待ってもらえなかったが、すぐには切らずに少し待ってもらうことができた。
第二子の出産は、陣痛から始まった。
深夜に陣痛がきた。まだ寝られるくらいの強さだったので、今のうちに寝ておこうと、途中で何回かめが覚めながらも、朝まで寝た。
朝になって、お風呂に入って、身体を温めてから、病院へ向かった。
「二人目は、そんな余裕がありました」。
便秘対策もバッチリ。妊娠中に、二人目の出産に向けて、ヒプノバースのCDを改めて聞き、イメージトレーニングもしていた。
すると、陣痛を痛みではなく、「赤ちゃんが頑張っているサイン」ととらえることができた。「なんか痛くなかったんですよ」。
助産師さんにも、「子宮口がここまで開いているお母さんの感じじゃないって言われたんですよ。落ち着いているし、痛そうじゃないからって」。
出産の30分前までは、それほど痛くなかった。
出産の時には、両家の母親、夫、そして第一子も、立ち会うことができた。
Cさんは、長男にも、出産に立ち会ってほしいという思いがあった。
「上の子からしたら、急に下の子が現れたら、お母さんが取られる感じがあると思うんですよ。だから、出てくる瞬間を見ていたら、お母さんから出てきたって、結び付くかなって。」
長男は、出てくる瞬間を怖がらずに見て、産後もしばらくは「ママのここから出てきた!」と言っていた。「それは、本当にその瞬間に立ち会えたんで、よかったなと思います」。
大事な家族に見守られて、次男を迎えることができた。
「二人目も、全てが思い通りになったわけではないけど、少なくとも、つらい、痛いっていうのはあんまりなかったので、それはよかったなって思います」。
「色々な条件が重なったのと、マインドを変えられたのとで、二人目はいいお産ができたかなって」。
子どもが運んできてくれる、豊かな経験
出産する前は、Cさんは子どもがあまり好きではなかった。子どもが嫌いではないが、24時間一緒に居られるかどうか、不安があった。
しかし、女性に産まれたからには、産んでみたい、という気持ちもあった。
実際に、産んでみると、「しんどい部分もあるけど、楽しい。独身の時って、子どもは未熟なものって思っていたんですけど、子どもってすごい。色んなことを教えてくれるし、運んできてくれるし、偉大な存在やなって。」
二人の男の子は、性格が全然違う。
長男は、平和主義で、好奇心が旺盛で、比較的育てやすい子。
一方、次男は、わが道をいくタイプで、自己主張が強い。
Cさんは、数秘(誕生日から、統計的にその人の性格傾向を占うもの)が好きなので、次男の妊娠中に、「この日に生れたら、こんな子が出てくるのか~」、どんな子が生まれてくるのか、占っていた。
やんちゃな次男は、数秘では「1」の数字。「1」は、リーダー気質で、「オレオレって感じなんですよ」。
次男が保育園でお友達を叩いてしまうことに悩んだりすることもあるが、子どもの気質、特性を知っていることで、子どもを理解しやすく、楽だと感じている。
そして、数秘が「9」の、平和主義で優しい長男は、次男に叩かれたり、髪の毛を引っ張られたりしても、我慢している。
「個性が、それぞれ違うなって。日々、こんなことするのか~って、気づかされています」。
自然によりそい、楽しむ生き方
Cさんのご夫婦は、結婚前に、“C家のクレド”を作った。クレドとは、ラテン語で、「信条」や「志」を表す。
夫とCさんは、これから家族として、どんな風に生きていきたいかを、『スタアト』という一つの単語に込めた。
「ス」は、Cさんのイニシャルを表している。
「タ」は、楽しむ。
「ア」は、挨拶。ありがとう、おはよう、ごめん、など、挨拶を声に出すという意味。
「ト」は、ときめく。ワクワク、ときめく心を忘れないように、という意味。
そして、全体として、「初心を忘れない」という意味がある。
このクレドは、Cさんの家の柱(構造部分で、外からは見えないところ)に、書き込まれている。
「何が、私たちには大事かなって。『スタアト』が一番大事。私の中の、基本。」
Cさんは、仕事をしながら、自然によりそう暮らしや子育てをしたいママたちのサークルの運営にも携わっている。
「自然派のママ」と言うと、頑固な人というイメージが世間にはあり、嫌煙する人もいる。
しかし、Cさんのスタンスに、排他的な頑固さはない。
自然に寄り添う暮らしは、「楽しんで生きる」ための一つの手段であり、自分とは違う価値観やライフスタイルを否定するようなこと(アンチ・予防接種とか、アンチ・ファーストフード、など)が、したいわけではない。
「人と生活したり、色んな話を聞いたりしていると、自分が大切にしているものって、何かわからなくなるんですけど、時々、確認して。やっぱり、楽しむのが大事やなって思いますね」。
【編集後記】
Cさんのお話は、柔らかい語り口で、何度も「楽しむ」という言葉が出てきました。
そして、ただ柔らかいだけでなく、どのお話にも通底する、“Cさんらしさ”、“Cさんの軸”、が感じられました。
私は、「前向きに生きていける人って、こんな心の持ちよう、工夫をしているんだ~」と、感心していました。
長男と、次男が、それぞれ違う保育園に通っていて、送迎だけでも一苦労。
子どもの小麦アレルギーのため、外食やスーパーの総菜で、食事を済ませるわけにもいかない。
そんな忙しいワーキングママなのに、Cさんからは、悲壮感や、疲弊は伝わってこない。
「人生を楽しむ」という、芯の通った、軽やかな、しなやかな、Cさんのありように、とても惹きつけられました。
Cさん、貴重なお時間とお話をありがとうございました!
インタビュー協力者募集中!
このインタビュー企画では、さまざまな女性に出産体験を語っていただいています。
臨床心理士の藤澤真莉が、あなたと一緒に、出産というポイントで織りなす人生のタペストリー=物語を、紡ぎます。
・ご自身の出産を振り返りたい方
・話すことで、出産体験にまとまりを持たせたい方
ぜひ、お話を聞かせてください!
年齢も、子どもの数も、関係ありません。
病院で普通のお産だったから・・・とかも関係ありません。
流産・死産も出産ととらえています。
出産と子育てを通して、あなたの感じたこと、体験したことをお聞きしたいのです。
協力してもいいよー!という方、
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産前・産後専門の心理カウンセラー・臨床心理士
ふじさわマターナルカウンセリングルーム
藤澤真莉