今、妊娠中の方、赤ちゃんのために、何か手作りしたいという思いはありますか?
もともとお裁縫や編み物が好きな方は、色んなベビーグッズを楽しんで作っておられることでしょう。
ハンドメイト、針仕事があんまり好きじゃない・・・という方も、
赤ちゃんを迎えるまでの時間に、何か作ってみたい、チャレンジしてみたい、と思っておられるかもしれません。
私は、第一子を妊娠中に、ベビー服をつくるための本を一冊買いました。
結局その中で作ったのは、1着のベストだけでしたが(笑)。
それでも、作り上げたことに満足しましたし、息子に実際に着せられた時はとっても嬉しかったです。
今、私がとっても興味深く読んでいる本、『マザリング 現代の母なる場所』(集英社/著 中村佑子)の中で、
妊娠中の女性が、赤ちゃんのものを手作りする時の気持ちについて、深く共感する一節がありました。(以下、引用です。)
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妊婦が赤ちゃんの産着を縫ったり、小さな靴を作ったり編んだりすることは、
それまで「胎児への愛ゆえにそうした手仕事をするのであり(略)一種の愛情表現なのだと思っていた。」
しかし必ずしもそうではなく、手を動かし赤ちゃんを想う時間を作ることで、
そうでもしなければ感じられない胎児への「情」を作り上げようと努力しているのだと。
愛情は所与の事実ではなく、能動的に付与すべきものなのだと。(P140)
そうそう~、本当にそう思う。
ここ(私のお腹の中)に、赤ちゃんがいる、という実感を感じられるのは、
不快なこと、痛み、我慢の多い妊娠期間にあって、なんとかこの妊娠をやり遂げようという気持ちの支えになりますよね。
この本の中で、赤ちゃんのための物を手作りするのは、
不確かな胎児への実感と愛情を、主体的・能動的に手繰り寄せようとする行為だあります。
女性が妊娠したら、胎児のことをかわいいと思うのが当たり前だ、と思われがちな世の中です。
しかし、胎児のことや、生まれたての赤ちゃんをかわいい、愛しいと感じるのは、
勝手に、自然にあふれるものではなく、
「愛したい、かわいいと思いたい」という、女性自身の主体性、能動的な姿勢や行為があってこそ、
「かわいい、愛しい」と思えるものではないかと思います。
妊娠や出産をしたからといって、必ずしも胎児や赤ちゃんへの愛情が、自然に湧いてくるとは限らない。
妊娠中の、女性の能動的、主体的な心の準備があり、そして、実際に赤ちゃんが生まれてきて、
・生まれたてのこの子が、私のことをじっと見てくれた。
・おっぱいに食らいつこうとしてくれた。
などの赤ちゃん側の反応があった時に、
「あぁ、かわいい!!」とか、
「私、あなたのお母さんだよ!」とか、
「すごい!生きようとしている!」とか、
その反応に感動する瞬間があって、
それまで準備してきた愛情の蛇口が開栓して、脳内でも愛情ホルモンのオキシトシンがバ~っと出て、
順調な愛着関係が育まれるんじゃないかな。
そう考えると、
「赤ちゃんのことをかわいいと思えない」産後の女性や、「私が、子どものことを愛せるか、大切にできるか不安」という妊婦さんに対して、
赤ちゃんの物を手作りするなんてことはなくても、
例えば
・コーヒー/お酒を控えている
・食べるものに気を遣っている
・お腹周りのゆるい服を着ている
などの行為の中に、その方なりの、妊娠に対する能動性を見出して、
「それって、あなたが赤ちゃんのためにしている大切なことですよ、それも愛情ですよ」と、伝えたいと思います。
そのように言葉にすることが、
お医者さんに、あるいは世間から「そうしなさいと言われているからしている」という受動的な態度から、
ご本人がまだ自覚していない、「私が赤ちゃんのためにしていること」という、能動性、主体的な物語が生まれるきっかけになってほしいです。
(ふじさわマターナルカウンセリングルーム代表 臨床心理士・公認心理師の藤澤真莉)
妊産婦専門の心理カウンセラーです。
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