絶対に謝らない夫とのコミュニケーション

こんにちは。訪問ありがとうございます。

妊娠中、産後、子育て中の女性と夫婦のための、心理カウンセラー/臨床心理士・公認心理師の藤澤真莉です。

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夫婦関係のご相談で、 ”ケンカをした時に、夫が絶対に謝らない”という事例は、とてもよくあることです。

ケンカをした後、妻の方は、夫婦間の空気の悪さに耐えかねて、とりあえず「ごめんね、私が悪かった」と謝るのですが、

夫は、「ごめん、俺も悪かった…」とはならずに、

さらに妻の上げ足をとるようなことを言ったり、嫌なところ、ダメなところを指摘したりしてきます。

言うだけ言った後、一旦はケンカが収束し、夫婦間の緊張は和らぐのですが、妻としては、心の内に、モヤモヤも不満も残ります。

そして、何か別のきっかけで、妻の不満が爆発して、同じパターンのケンカを繰り返してしまいます。

「そのような夫に、どう言ったらいいの?どうコミュニケーションをとったらいいの?
私は、できるだけ夫の気持ちを逆なでしように、言い方にも気を付けた。言うタイミングも見計らった。
でも、やっぱり上手く行かないんです。」

というお悩み。

私は、そんな女性の悩みに、心底、共感します。
そして、謝ることができ、夫婦関係の悪さが子どもに影響を及ぼすことを心配でき、関係性の維持を大事に思える女性の、
柔軟さや、忍耐、賢明さを、尊敬します。

しかし、妻にも、譲れないことがありますよね。
譲れない考えや価値観、夢を大事にし、アサーティブ=自己主張する力を、夫婦間で発揮してほしい、とも思います。

夫婦だからこそ、距離を持って話し合うって、とても難しい。
今日は、私が”謝らない夫”とのコミュニケーションについて、アドヴァイスしていることを、紹介します。

目次

謝らない夫の心の構造

まず、謝らない夫とは、どのような人でしょうか?

典型的なイメージとしては、こんな感じです。
・独立心が旺盛。
・仕事上、人の上に立つ立場にある。
・リーダーシップがある。
・実際に、自分の考えを実行し、貫く能力があり、実力主義、成果主義。
・人との関係において、どちらが上か下か、勝か負けか、を気にする。
・マイペースで、人の意見はあまり聞かない。
・歴史上の偉人や、政治的・経済的なカリスマの存在に憧れがある。
・甘えが嫌い。
(そして、発達障害の可能性が除外される。)

社会的に成功していることも多く、このような性格傾向は、長所でもあり、短所でもあります。
頼もしかったり、”家族や部下を、自分が守ろう”という気持ちも、たくさん持っていて、”良いパパ”な一面もあります。
私は、このような人を、”心が筋肉マッチョ”と言ったりします。

”心が筋肉マッチョな人”は、一見、他人の顔色を窺ったりせず、「ツラの皮が厚い」人のように映ります。

しかし、実は、以下の点では、「自分と他人を隔てる皮」が大変薄く、傷つきやすい人、心の脆い人でもあります。

それはどのような点かと言うと、自分と他人の違いに直面する、という点です。

当然のことながら、妻と夫が、違う意見を持つ、違う気持ちを持つことがあります。
これは、”自分と相手は、違う人間である”事実、人間関係の本質から生じることなので、
避けようがありません。

違いがあることに、どちらがいいも悪いもない。

しかし、”人との違いがある”のは、物事や相手を自分の思い通りにできないということであり、心には、苦痛や傷つき、怒りを感じるものです。

”心が筋肉マッチョ”な人は、この苦痛や傷つきに耐えられず、その体験を受け止める心の器が、とても脆いのです。

その脆さをカバーし、傷つきを感じないようにするために、
ストイックに、心の筋肉をマッチョ化させています。

人間は、赤ちゃんの時、養育者との一体感に支えられて、自己を作っていくものです。

言葉を話せず、自分で自分の世話ができない赤ちゃんは、
「自分が不快な時は、自分から要求しなくても、よしよししてくれて、不快を取り除いてくれる人」
「お腹がすいたと言わなくても、泣いたらおっぱいを吸わせてくれる人」

が、生きるために必要です。

そこに、自分と他人の心の境界線がないことが、赤ちゃんにおいては、健康なのです。

傷ついたときに、甘えさえてくれて、自分の気持ちに寄り添ってくれる人がいる、という安心感が支えとなり、
お母さんとの一体感に包まれた二者関係から、徐々に世界を広げていき、色々な人との関係性を生きます。

その中で、人との違いにぶつかって、傷ついたり怒ったりしながら、”自分と他人は違う存在”ということを、学んでいきます。
そして最終的に、「お母さん(=ここでは母性的な養育者の象徴という意味で使います)も、私とは違う人だったんだ」

と、寂しさ・悲しさ・罪悪感・感謝・安堵の入り混じった気持ちで、穏やかに思えるようになったら、
”人との違いが受け入れられる大人の心”になったと言えます。

しかし、”心が筋肉マッチョ”な人は、人と違いがあることで生じる心の苦痛を、耐えるだけの心の器、安心感が十分ではなく、
傷ついた時によしよししてくれる安全基地がなかったのかもしれません。

そのために、傷ついた心の痛み、またその痛みを感じている”ダメな自分”は、
「自分の一部」として統合することができません。


そんな弱くてダメで、無能な自分は、”自分じゃない!”と切り離して、
良くできる自分、能力が高くて、なんでも思い通りにできる万能的な自分を、マッチョ化して、どんどん作り上げていきます。

ここまで書いてきたような、謝れない人は、育ちの中での心のつまづきや傷があるだけでなく、
「男たるもの…」「夫・父親たるもの…」という、日本人男性のジェンダー規範が、謝る事を難しくする背景にあると思います。

”心が筋肉マッチョな人”の、反応と行動の連鎖

だから、謝ることができない、心が筋肉マッチョさんは、人との違いに直面すると、以下のような心の反応と行動の連鎖が生じます。

心の反応として、恥をかかされた、馬鹿にされた、なめられた、否定された、負けたくない!という不快な気持ちが生じます。

そして、不快感を自分の心に留め置くことができず、心を守るための防衛として、
暴力や暴言、相手の上げ足をとる、ダメなところを指摘して優位に立つ、あるいは「こいつは自分にとって大事ではない、取るに足らない存在だ」と価値下げをしたりします。

自分の非を認めて、謝ることなど難しい。

もちろん、不当な扱いを受けたり、ひどいことをされて、傷ついたり怒ったりするのは当然で、それは健康的な自己愛の反応です。

しかし、夫婦間の対等なコミュニケーションを難しく、建設的な話し合いにならない場合、このような反応が起きています。

では、このような人と、長期的に夫婦をやっていくには、どのように接したらよいのでしょうか。

絶対に謝らない夫とのコミュニケーション

 まずは、自分たちのケンカのパターンを、認識しましょう。

どんなきっかけ?どんなプロセスをたどる?相手がキレたり、自分がキレてしまうNGワードや態度は?
ケンカのあと、どのように関係修復の試みをしている?どのくらいのスパンでケンカする?子どもや両親を巻き込んでいる?
その一連のパターンの中で、あなたは何を感じる?
このような質問を、紙に書く、人に話すことで、自分たちのケンカを、客観的に捉え、パターンに気付くことができます。

”パターンに気付く”ことがとても大切です。

次に、実際のケンカの予兆で、「あ、また同じパターンにはまりかけている!」と気づくことができれば、反応の仕方を変えることができます。
しかし、この「気づく」というのが、一人ではなかなか難しい!
なぜなら、怒りや恐怖は、身を守るための本能的な反応で、反射的に起こるからです。また、身体的な緊張も同時に起こります。

これらは、人間らしい理性を司る大脳新皮質の働きではなく、もっと古い動物的な脳の部位の働きにより生じる反応なので、
気付くことも、コントロールすることも難しいのです。

だから、カウンセリングの中では、そこに”自覚”が生まれるように、ケンカのパターンと、その時の自分の反応を丁寧に言語化していきます。

② 相手の反応と行動の連鎖を言葉でたどる

 自分がパターンにはまった時の、反応と行動の連鎖に気付くことができるようになると、相手の反応と行動の連鎖にも、気づくことが容易になります。

そして、上記の図に示した、相手の反応と行動の連鎖を、言葉でたどる試みが有効です。

例えば、こんな感じ。

「子どもの誕生日の過ごし方について、あなたと私の意見が違ったことで、自分の意見や気持ちが否定されたと、思ったんじゃない?

まるで、あなたが子どもを喜ばせてあげたい気持ちまで、私が否定しているように感じで嫌だったんじゃない?

それで、私を責めたくなったのかな。」

という感じです。つまり、相手が感じたであろう苦痛→自己の傷つき→防衛、の順番で、相手が言葉にできないでいる連鎖を、言語化します。

このような関わりを、長期的に、粘り強く続ける、というのも大事なポイントです。

なぜなら、これは心の発達を促すことだからです。

ハイハイができたばかりの赤ちゃんに、いきなり、立って歩いて!と期待してもダメで、
その時には、たくさんハイハイする経験が大事。

自分の心を丁寧に言葉でたどってもらう経験が、あまりに乏しかった人に、
一度や二度のこのような関わりで、相手がガラッと変わることは、期待しない方がよいと思います。

ここは、人との関係の中で、「言葉で自分の心をたどってもらう経験をすること」そのものが大事なんです。

③ 自分の傷つきや恐怖を、言葉でコミュニケートする

 ②のような関わりを続けていると、相手の中にも、だんだんと、自分の傷つきや悲しさ、そしてその後に生じる怒りや攻撃に、気づきが生まれてきます。そのようになってくると、「あ、ちょっと変わってきたな」という感じがし始めます。

 そしたら、あなた自身の、傷つきや恐怖を、言葉で相手に伝える、コミュニケートする、という試みをしてはどうでしょうか。

 「そんな風に、大きい声を出されると、私は怖い。何も言えなくなっちゃうの。」

「あなたに、○○と言われたら、私は母親としての自分が否定されているようで傷つきます。」

このように、あなた自身が冷静に伝えることで、柔らかい気持ちを、表現してもよい、相手に伝えてもよい、というモデルになりえます。

自分の傷つきや恐怖を、コミュニケートする経験が乏しかった人が、

人生のパートナーにそれをしてもらい、自分もできるようになると、
とても生きるのが楽になり、信頼関係も深まります。

そして、自分の悪かったことを認めて謝ることが、結果的にできるようになります。

本当に、心のエネルギーを要する大変な作業ですし、自分も無傷ではいられないプロセスだと思います。

ですが、このような作業は、夫婦関係の質に、家族内の空気に、大きく影響する、ものすごく大事なことだと思います。

サポートが欲しい方は、ぜひカウンセリングを利用してください。。。

と最後は、宣伝になってしまいました。

ふ~、久しぶりにしっかりブログを書きました。

書きたいことはいっぱいあるけど、文章にするのに時間がかかってしまうのが、私の悩みです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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