大阪で、妊娠中・産後・育児中の女性専門心理カウンセラー、臨床心理士、公認心理師の
藤澤真莉です。
物を投げずにはおれない衝動
「子育て中に、物を投げたことのない人、手を挙げてください~」
ってママ100人に聞いたら、どれくらい手があがるかなぁ。
私の予想では、少数派じゃないかと思います。
やり場のない怒りや、疲れからくる苛立ちで、思わず物を投げてしまったこと、私もあります。
私の場合は、おむつケースを部屋の隅にむけて投げていました。。。
子どもには当てないようにとか、高価なものを壊さないように、という理性はかろうじてありましたが、
「虐待しちゃうお母さんって、こんな気持ちの延長なんだろうな」と、
自分も虐待をするポテンシャルがあると、自分に怖さも感じていました。
怒りのコントロールが難しい、というのは、子育て中のお母さんにとても多い訴えです。
物をぶつけていると同時に、やり場のない気持ちも、ぶつけているんですよね。
痛いほどわかる!
それは、感情というより、衝動っていう言葉の方がぴったり。意識のコントロールの範疇にない。
自分が壊れないように、外に出そうと発動する、衝動。
衝動が発動する時って、私のカウンセラーの経験としては、『解離』が起こっている場合が多いです。
後から、「あんなことをしてしまったのは、確かに私なんだけど、どうしてそんなことしてしまったのか、よく思いだせないんです。」
「ふだんの私なら、絶対にそんなことしないんだけど、あの時は別人のようでした」ということがあれば、解離がある可能性があります。
解離とは
解離は、自我や意識が処理できない情動を体験した時、心が壊れないように、記憶と体験を、意識から切り離すことです。
受け入れられない体験を、切り離して意識から遠くにおいて置いたり、体験をそのまま冷凍してカチカチにして、自我を脅かさないものにすることで、心を守る方法です。
人が自分の感情を語れるようになるには、
出来事に対する反応を、大脳で”自分の感情”として体験し、それに言葉を与える認知的な処理をすることが必要です。
その処理ができない体験については、言葉にすることも、記憶に残すことも難しい。
解離が癒えるとは、切り離された体験が溶け出してきて、自分の意識、主体に戻ってくるプロセスです。
冷凍していた記憶が解けてくると、自分のココロを壊しかねないような恐怖、自我が解体してしまうような、名前のつけようのない不快な感情も、同時に戻ってきます。
だから、解離が良くなっていく過程は、とても苦しいし、怖い気持ちになります。
そこで、心理的に守られた環境や、溶け出てきたものを受け止めてくれる人間関係が必要となります。
一時的に、引きこもったり、現実的な外側のあれこれを処理することができなくなったり、することがあります。
そこのプロセスを理解し、見守り、守ってくれるまなざし、関係性がとっても大事なのです。
産前産後と解離
以下は、全くの私見ですが、
出産や育児を機に、それまで解離していた体験の、解離がゆるんできちゃうことがあるのではないかなぁと、思います。
身体的にも、骨盤が開くとか、じん帯がゆるむとか、大きな変化がありますよね。
解離している感情は、筋肉をカチーンと緊張させることで、感じないようにしている、という説、そういう見方もあるので、
妊娠や出産にともなう身体的な変化が、解離という心の守りを、緩めてしまうことはあるんじゃないかと。
産後に、忘れていた過去の傷ついた体験を思いだしたり、その他の記憶をふと思い出すってこと、ありませんか。
そして、赤ちゃんは、言葉になる前の、生(なま)の情動を、命がけで訴えてくるわけです。
それを、養育者が受け止めて、身体的にも心理的にも処理して(つまり、「お腹すいたね~」と言いながら、なだめて、おっぱいをあげること)、
赤ちゃんに応答する必要があるんですが、
解離のあるお母さんにとっては、それって、とても心の労力がいる仕事だろうと思います。
なんていうか、ザワザワザワ~って、虫が這いあがってくるような感覚があり、それでも「母親としてやらなくては!」という義務感があり、
もう大変なんです。
だからね、そんな女性こそ、安心して話せる場って、大事だなぁと思うのです。
お母さん自身が、怒れて、泣けて、それでも怖い目をみることなく、見捨てられることがない、嫌われない、と安心できる体験をすることは、
お母さん自身の解離を癒すことにつながり、また前向きに育児に取り組むことにもつながるのではないでしょうか。
そしたら、物を投げなくてもよくなるかもしれない。
あとは、単純に、キャパシティーをオーバーしないこと。
自分でできないと判断したら、周囲に助けを求めること。
解離をテーマとした産前・産後のカウンセリング。
とっても難しいのですが、こちらとしては、腹を据えて、腕まくりして取り組みます。