産後うつ病について
こんにちは、大阪で産前・産後の女性専門カウンセラー/臨床心理士の藤澤真莉です。
産後うつ病について
産後うつ病は、約10人に一人がなると言われますが、これは精神科に行って、診断を受けた人についての統計です。
「病院には行かなかったけど、ウツだったと思う」という人は、もっと多い。
私は、もっとこの層の人にアプローチしたい!
うつ病は、英語で”depression”と書くのですが、
de(下方向に)+press(押す) という言葉の成り立ちになります。
では、何によって、下方向に押し込まれているのかというと、
次の絵のような要因、負荷が、女性に乗っかっているのです。
<産後うつ病のリスク要因>
・出産による、ホルモンの急激な変化。
・出産による身体のダメージ、疲労。
・慣れない赤ちゃんのお世話
・うつ病などの既往。また、生理痛やPMSが産前からある方は、産後うつ病になりやすい傾向があります。
・被養育体験。つまり、お母さん自身が、どのように育てられたか。
・○○するべき、○○であらねば、という思考。認知スタイル。
・夫のサポートの不足。(家事・育児の担い手としても。女性への情緒的サポートも。)
・キャリアへの焦り。出産にともなう人間関係の変化、社会的に孤立。
・現在の、親との関係。
・ネガティブライフイベント(身近な人の死、病気。災害。夫の失職、など。)
このような複数の要因が重なると、産後うつ病になります。
それによって、
<産後うつ病の症状>
・起きれない。身体が動かない。家事、育児ができない。
・赤ちゃんがかわいいと思えない。
・ずーっと気分が沈んでいる。
・ちょっとしたことで涙が勝手に出る。すぐに出る。
・テレビやSNSがしんどい。面白くない。楽しかったことが楽しくなくなる。
・不眠、食欲がない。
・「こんなお母さんでごめんね」と自分を責める、罪悪感が強い。
・非合理な焦り。「お金がない!」など。
・「死にたい」。
などの症状があります。
主観的には、「(幸せなはずなのに)わけがわからないんだけど、とにかくつらい―。」というのもあるでしょう。
だから、女性に乗っかっている要因の一つ一つを、周りの人が降ろしていくことと、
女性自身が、重荷を下ろすことを、自分に許可することが、大事になります。
まず、休養は絶対に大事。ゆっくり休める環境をつくること、睡眠と食事をとれるようになることが、なにより優先です。
そして、抗うつ薬などの、お薬の力を借りるのが有効な人もいれば、効かない人もいます。
抗うつ薬は、脳内の神経伝達物質(セロトニン、ノルアドレナリンなど)の不調を、整えてくれるものなので、
こういう要因が強い人には、とても有効です。
「~するべき」「~しなければならない」という思考の強い人や、被養育体験(不安定な愛着関係など)などの心理的な要因が強い人には、心理療法が向いています。薬物療法と並行してもいい。
軽度の方なら、信頼できる人に、ちゃんと自分の話を聴いてもらうだけで、
楽になったり、自分自身で問題の解決に向けて動く力が湧いてきたりします。
うつ病への心理療法
うつ病への心理療法は、認知行動療法が主流です。
新しい認知行動療法として、
アクセプタンス・コミットメント・セラピー(ACT)というものや、
マインドフルネス認知療法、などが注目をあびています。
私は、認知行動療法はあまり専門的に勉強したことがないのですが、
このあたりは、早急に私も勉強して、できるようになりたいなぁと思っているところです。
従来の精神力動的、深層心理学的な心理療法でも、うつ病へのアプローチは色々考えられています。
漢字では、うつは、「鬱」と、とても難しい字を書きます。
この字は、落ち込んだ気分のことを表すとともに、「鬱蒼とした森」のように、草木がおおい茂っている様子のことも意味します。
ウツによって、心が下方向に押し込まれるのですが、
自分の内面の奥深くに降りていくと、そこには鬱蒼とした、怪しくも豊かな生命力、エネルギーがある。
内側に引きこもり、そのエネルギーに触れる。
そして、一見すると生きているようには見えないさなぎが、実はイモムシから蝶への大変化の準備を進めているように、
うつで内面に引きこもっている間に、「心の質的な変容」が起こります。その過程を、サポートする。
ユング派の心理療法では、こんなアプローチをしています。
下に押し込まれることは、それまでの自我、私にとっては、敗北であり、屈辱であり、死であり、人生が終わるような怖い経験になります。
しかし、心の全体を見てみると、それまで繋がっていなかった、生命力、湧き出るエネルギーとつながれるチャンスでもあります。
だから、うつ病から回復した時、「元の元気な私」(イモムシ)に戻るのではありません。
より成熟した、心の陰影や濃淡を楽しめる、深みを増した「大人の心」(蝶)となっているわけです。
うつ病には、心の質的な変容、成長のプロセスという一面もあります。
どんなアプローチが向いているかは、クライアントさんの好みや、セラピストとの相性もある。
薬物療法にせよ、心理療法にせよ、少なくとも3か月~1年単位で、徐々に良くなっていくものと思ってほしい。
また、産後うつ病の場合は、赤ちゃんの成長という、時間の要素も、とても大事なのです。
私は、できるだけ丁寧に、苦しい思いをしている女性に寄り添いたいし、
病院や保健所との連携などのソーシャルワークも、全力でやる所存です。
どうかどうか、命を落とさないでください。人生の難所を、一緒に乗り切りましょう。
ふじさわマターナルカウンセリングルーム
藤澤真莉